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[WBS] 中国「脱貧困」政策!経済特区の実力とは?

2017年10月17日

ワールドビジネスサテライト(WBS)

中国では10月18日から事実上の最高意思決定機関、共産党大会が開かれます。

この大会では指導部の人事や政策など今後5年間の党の方針が決定されます。

そこで今日から3日間、「習近平体制の行方」をテーマにいま中国で何が起きているのかをお伝えしていきます。

1日目は習主席の目玉政策である「脱貧困」についてです。

都市と地方の格差が問題になる中、中国政府は貧困の撲滅に力を入れています。

しかし取材を進めるとある問題点も見えてきました。

貴州省

中国南西部、貴州省貴陽。かつては貧しい地区でしたが4車線に広がる新しい道路が急速に整備されています。

以前は狭い道が1つしか無かったが開発によってとても広い道ができた。

ここは中国政府公認の経済特区でビッグデータ、大量の情報を処理するIT・通信業の誘致に力を入れています。

ここは私達が管理しているデータセンターです。

入り口には「Foxconn(フォックスコン)」の文字。シャープを買収した鴻海グループのデータセンターです。

初めてテレビカメラが入りました。

山口博之記者は、

非常に涼しいです、寒いぐらい。柔らかな風が吹いています。

ずらりと並んだデータサーバー。その数は6,000台。

標高が高い貴州省の平均気温は真夏でも20度台半ばと涼しくクーラーが必要ないため節電効果は年間3,000万円ほどにのぼるといいます。

アメリカの半導体メーカーが進出したほか、アップルも施設を作ることを決めるなど世界的企業が続々進出する予定です。

貨車幇

こちらは中国の物流ITベンチャー。社屋の賃料が2割安くなる制度を利用して特区への本社移転を決めました。

貴州省出身の人!

約700人の本社社員の8割以上が地元出身で多くの雇用が生まれました。

貴州出身の社員は、

自分の故郷で働けてうれしい。故郷に貢献できる。

貴州の大学出身です。私の大学では多くの学生がこの会社でインターンをして就職しています。

農村部

貴州省の変貌は農村部でも。

目につくのは真っ白な家屋が立ち並ぶ光景です。

中国政府は家屋の改修やインフラ整備を進め、大型ビニールハウスなどを導入して農業の生産性を向上。

農園を訪れるお客様も多くなり収入も50倍になった農民がいるなど貴州省では2016年の1年間で70万人以上が貧困を脱出。全国平均よりも高い10%以上の経済成長率となりました。

村民は、

生活水準がかなり上がった。村を訪れるお客様も増え儲かっている。

習主席は貧しい農村を足繁く視察、約16兆円を投じ2020年までに貧困層を5,000万人以上減らす計画です。

2015年11月には、

私は常に重要課題として「貧困撲滅」に取り組み最も精力を傾けてきた。

平塘天眼景区

貴陽から車で3時間、奥地ではこんな観光地が。

出迎えてくれたのはコペルニクスやガリレオなど歴史上の天文学者たちです。

宇宙をテーマにした開発地区「平塘天眼景区」。

東京ドーム64個分の広さを持つテーマパークは宇宙の歴史や天体について学べる施設です。

何故かそこには宇宙人が…。

スタッフは、

宇宙人を発見することが目的です。

この観光地の目玉が、宇宙からの電磁波などを受診して地球外生命体を探す中国の国家プロジェクト「天眼」。

直径500メートル、世界最大の電波望遠鏡です。

天眼を見た観光客は、

感動した、中国人の誇りだ。

もう涙が出そう。国の偉大さと強さを実感した。

住民

しかし、この開発の裏にある騒動が。

巨大な望遠鏡やその周辺で約1万人が住み慣れた家を追われることになったのです。

テーマパークにいた元住民は、

もともと私はこの土地に住んでいた。元の自宅はテーマパークにあるホテルの場所。村民はもうみんな移住させられた。

テーマパークと天眼を往復するシャトルバスが通る裏の1本道はキレイに整備されていますが、周りには馬などの家畜意外、ほとんど人気がありません、

電波望遠鏡による精密な天体観測には近隣住民が使う電子機器などが有害だとして立ち退きが進み、荒れ果てた家が続いていました。

ようやく住民に出会うことができました。

王さん(仮名)は、

この辺りの住民はみんな移住してしまい、もう戻ってきません。多くの引っ越しが強制的でした。

幼少期からこの村で育ち、農業を営む王さん。夫と子どもの3人で暮らしています。

1年前から政府の担当者が強制移住の同意書にサインをするように迫ってきたといいます。

逆らえば政府が派遣した特殊警察に殴られる。この前も多くの人たちが殴られて拘束された。

強制移住に同意すれば補償金1,000万円を受け取ることができます。

年収が12万円の王さんにとっては悪くない内容に見えますが、

いま住んでいる家と新しい家を交換する。それなのに自腹を切る羽目になる。

移住先の住宅の価格が補償金より数割高く設定されたほか、農地も確保することができないと王さんは不満を漏らします。

政府は脱貧困の切り札として移民、いわゆる強制移住を推進しています。

一番大事なのは農地。まさに生存の問題だ。家はお金があれば建てられるが、農地が無ければ食べていけない。政府は一生分の補償はしてくれない。

「これからどうするのか?」

私にも分からない…。

涙ながらに訴える王さん。

貧困対策として中国全土では年間200万以上が強制移住させられる計画です。

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