中国でいま話題となっているのが習近平国家主席肝いりの新たな経済特区の構想です。
中国では中央政府が直接管理する特区のことを「国家級新区」と呼びます。現在18ありますが、新たに19番目として「雄安新区」を北京の隣の河北省に作るという構想です。
「科学技術を中心に中国経済を発展させる新たなモデル」を作るという国を挙げてのプロジェクトですが現場を取材してみると異変が起きていました。
雄安新区
「雄安新区」の設置が決まった中国・河北省。道路にはなぜか長い車の列。1キロ近く続いたその長い列の先にあったのは新車の検査場「自動車総合性能検測書」。すべて新車の登録を待つ車です。
新車の登録を待つ人は、
昨日の深夜2時に来た。もうすぐ2晩だ。車のナンバー目当ての人が多い。
北京など環境汚染が続く中国の大都市では排ガス規制のため地元ナンバーの車しか走れない時間帯を作るなど車の台数を制限しています。
車のナンバーは抽選制なので入手が困難。100万円もの高値で売買されることも珍しくありません。
新区の車の台数に制限がかかる前にナンバーを確保しようと車を買う人が急増しているのです。
1日に70~80台売れる。
「以前は?」
多くても20台。多い人で30台買った。
ナンバーを数多く取得して転売し、儲けようとするにわか投資家のため買う車は、
みんなこの車を買う。
「いくら?」
約61万円。
なるべく安い車を選び、売れるまで置いておく人が多いといいます。
専門家の意見
4月初め、発表された雄安新区構想。北京から約100キロ離れた農村部に道路などのインフラを作り200万人規模の新たな都市を作るというもので中国メディアが「国家1000年の計画」と報道しています。
習政権が力を入れるワケを専門家は経済の構造改革が進んでいないためと分析します。
SMBC日興証券、中国担当シニアエコノミストの肖敏捷さんは、
停滞感や閉塞感を打ち破るためには何か起爆剤がないか。もう深圳は大成功、世界経済史に残るぐらいだ。
雄安新区の不動産
文化大革命の爪痕が残る1980年代。中国の指導者、鄧小平氏は深圳を特区とする構想を打ち出して外資を誘致。経済躍進の原動力としています。
実際、構想が発表されると大規模なインフラ投資が行われるという予想で株価は高騰。
さらに雄安新区近くの不動産価格は大幅に上がっています。不動産販売所にはマンションを求める人が押しかけました。
マンション価格は1年間で6割高くなっています。
一方、当の雄安新区の不動産店では異変が、店の前になにやら人だかりが。入り口は白いテープで封鎖されています。店の中には人気がありません。
その理由は、
嘘の宣伝を行い、何の手続きもすることなく、不動産の秩序を乱したためと理由が書かれています。
ここだけではありません。街の不動産業者はすえて封鎖されていました。
地価がこれまで以上に高騰しバブル化することを恐れた中国政府が雄安新区地域の不動産取引の一切を停止。マンション建設も強制的にストップさせたのです。
建設がストップしているのものの地元住民にはとても買えない価格まですでに値上がりしているといいます。
影響を心配する声も、
不動産が高くなると、海外や他の省の投資家が来られなくなる。
国を挙げてのプロジェクトのはずが始まる前からやや混乱気味です。
果たして雄安新区は成功するのか?
SMBC日興証券、中国担当シニアエコノミストの肖敏捷さんは、
現時点でひと言、言えるのは「雄安新区」。ハッキリしているのはこの4文字だけ。果たして優遇の対象が外資なのか内資なのか、国有企業なのか民営企業なのか、製造業なのか、あるいは制度改革なのか全体像が見えてこない。
かつての深圳のように雄安新区を中国経済の新たな原動力にできるのか?
習政権の手腕が問われます。