株式会社アライアンスシーフーズ
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6月、東京・中央区。
水産商社の株式会社アライアンスシーフーズ。様々な海産物を扱いカニの輸入では日本でトップクラスです。
この日、カニの需要が跳ね上がる年末に向けて、どう調達するか話し合っていました。
今年のアラスカの漁獲量は?
昨年から40%減。
カニの仕入れ担当、綛井悟さん。今年の異常事態に危機感を募らせていました。
年末、最悪の場合、日本国内のお客様へ供給できない恐れがある。
6月の時点で例年の半分しかカニの在庫がなかったのです。なぜ、こんな状況に陥ったのか?
カニの漁場
カニの主な漁場はロシア、アメリカ、カナダです。最大の輸入元、ロシアでは2014年から自然保護のため日本への輸出を制限。さらにアメリカも2016年から漁獲枠を4割減らしました。
市場に出回るカニが激減し、かつてない厳しい状況に追い込まれていました。
そこで綛井悟さんたちは、新たな漁場を探していました。
バレンツの漁場ですが、カナダに匹敵する資源があるといわれている。
ノルウェーの北、北極圏のバレンツ海。未知なる海で新たにカニを確保しようというのです。
北に行けば行くほど、カニが大きい。
バレンツ海のカニ
バレンツ海のカニ漁を任されたのが大谷雅康さん(54歳)。
3年前から少しずつ輸入していましたが、ある問題が。
届いたカニをチェックに来た大谷雅康さん。入念に見ていきます。すると、
エラの処理は悪いし、ミソも付いている。使い物にならない。
「使い物にならない」というカニを解凍してみるとミソやエラが残っていました。こうしたカニは時間が経つと酸化して真っ黒になります。見栄えが悪く、なにより味が落ちてしまうのです。
商品確保の切り札、バレンツ海のカニ。しかし品質に大きな課題を抱えていました。
ノルウェー
7月上旬、北欧ノルウェー。バレンツ海に面した北部の村、ボーツフィヨルド。
大谷雅康さんがやって来ました。自ら漁船に乗り込んで、カニの加工を指導しようというのです。
船長のウルフ・ベルグランドさん。株式会社アライアンスシーフーズは3年前からこの船でズワイガニ漁をしていました。
まだ新しいビジネスだけど、いいね。文句ないよ。
船員の多くは20代前半の若者たち。漁師の経験はほとんどありません。
さらに問題なのが、
「カニを食べたことは?」
ないね。食べたことない。
実はノルウェーではカニをほとんど食べません。そんな彼らを指導するのが大谷雅康さんの役目なのです。
出港
いよいよ船が出向します。航海は3週間。
今回は新しい海域に行ってみようと思うんだ。
年末用のカニを確保するため、これまで行ったことのない海域へ船を進めるといいます。
目指すは北に1,000キロの北極圏。
いいカニが獲れればうれしいし、ある意味チャレンジ。
到着までの間、船員たちはカニのエサとなるスルメイカやニシンを仕込んでいきます。
出発から30時間、最初の漁場に到着しました。船員たちが次々とエサの付いたカゴを海へと落としていきます。カゴの数は一ヵ所につき約200個。これを何ヶ所も仕掛けるのです。
そして2日後、今度はカゴを引き上げる作業に入りました。
いよいよ、大谷雅康さんの出番。初めての漁場、吉と出るか凶と出るか?
最初のカゴが上がってきました。入っていたのはズワイガニ。次のカゴにもカニの姿が。幸先の良いスタートです。
ところが大谷雅康さん、カニに触ると次々に海へと戻していきます。
どうして海へ戻すんだ?
殻がやわらかいからね。
海へ戻していたのは甲羅がやわらかい脱皮したばかりのカニ。茹でても中身がスカスカなため商品価値がないのです。
まだソフトだし、脱皮を繰り返すカニだから。捨てないと。
加工できるカニは仕分けされて船内へ。
すぐに作業が始まります。まずはカニを2つに割ってブラシで掃除。それをサイズごとに選別し並べていきます。続いて水に入れて血抜きを行います。それが終わると今度はマイナス20度の液体につけて冷凍するのです。
1時間後、カチカチに凍ったカニが出てきました。それを箱詰めしていきます。1箱15キロ。あとは船底の冷凍庫へ。
大谷雅康さん、問題のカニの加工の工程を入念にチェックしていました。
すると、掃除したばかりのカニにミソがついていました。さらにエラの取り残し。
大谷雅康さん、一人の作業員を呼びつけます。
お前が悪いんだ。気を付けていないからこうなるんだ。
これ全部?
そうだ!
ストップ!汚いカニを入れるな。ゴミ箱に捨てろ!
教えたはずの仕事が出来ていませんでした。いいカニが獲れても加工が悪ければ商品価値は激減します。
大谷雅康さんの怒鳴り声を聞いて船長が降りてきました。
2人しかいないから作業が追いつかないんです。
そんなの関係ない。ちゃんとしろ。おまえも、おまえもしっかりチェックして丁寧に仕事をしろ。
大谷雅康さん、今度はデッキに向かいます。
汚いカニは海へ戻せ。加工に回すな。
指摘したのは黒いカニ。年老いていて身の入りが悪く、これも商品価値がありません。
カニを食べる習慣のない船員たち。大谷雅康さんは繰り返し、根気よく教えます。
品質の維持に大谷さんは欠かせないよ。現場を見てちゃんとコントロールしてくれるからね。
不漁
出港して1週間。漁に異変が。穫れる量が激減していました。さらに上がってくるのは脱皮したてのカニばかり。使い物になりません。
カニの脱皮のシーズンがなぜか去年より早く始まり、商品になるカニが獲れなくなっていたのです。
「ここまでひどい経験は?」
初めて。この時期に脱皮に入るなんて聞いたことがない。どうなるか分からないね。
漁を始めて2週間。船底の冷凍庫はガラガラ。予定の4分の1しか埋まっていませんでした。
未開拓の海に挑んだものの結果は空振り。果たして年末のカニは確保できるのか?
カニの確保
11月、東京の株式会社アライアンスシーフーズ。
カニの仕入れを担当する綛井悟さん(47歳)。夏以降も思うようにカニを確保できていませんでした。
営業からも泣きが。
今、在庫が少なくて、12月はカニは年末商材なので供給できないのは一番つらい。
綛井悟さん、かつてない厳しい状況に追い込まれていました。
韓国
11月下旬、韓国・釜山。世界中から様々な水産物が集まってくる東アジアの貿易拠点です。
そこに綛井悟さんの姿がありました。
訪ねたのはカニを扱う、韓国人の仲買人。
案内してもらえる追加のカニはない?
今はないでしょう、韓国では。今はタラバもズワイも在庫は一切ない。中国もどんどん消費量が増えている。
年末用のカニを買い付けにやって来たのですが、日本より高く買う中国に売った後でした。もはや在庫がないといいます。
結局、この日、成果はありませんでした。
翌日、綛井悟さんは新たな情報を得て別の場所へとやって来ました。巨大な冷凍施設です。
出てきたのは売れ残っていたやや小ぶりのズワイガニ。
いいですね。
見た目には問題ないそうです。
身の詰まりはどうなのか?
身入りは90パーセント以上。
身はぎっしりと詰まっていて、これは掘り出し物。
お客様に喜んでもらえる品質なので取りにいきたいと思う。
韓国人のブリーカーと早速、交渉します。綛井悟さん、まずは去年と同じ価格を提示。しかし、完全に無視。
これだったらいけるということですか?
これを円にするといくらですか?
今度は1割増の価格。
これも無理。
とりつくシマもありません。
そこまで相場が変わっているなら、もちろん切り替えないといけない。
相場は綛井悟さんの創造を遥かに超えた高値になっていました。
これでお願いできないですか?
ついに去年の3割増を提示します。すると始めてブリーカーが動きました。仲間と相場を確認しているようです。
とりあえず私の分は決めましょう。
ありがとうございます。
ようやく買い付けに成功。
今までにない価格帯での交渉だったので、非常に厳しいところはあった。間に合うと思う、年内の販売には。
かに地獄
12月、東京・新橋。
かに地獄に株式会社アライアンスシーフーズが買い付けたカニが入荷してきました。
かに地獄の仕入れ担当、山田博義さん、早速商品をチェックします。
気になる売値は100gで580円です。
安く提供しないと店名が泣く。
取引会社と少しずつ利益を削って、これまでと同じ価格に抑えました。
夜8時、店内はサラリーマンで大盛況に。焼かれていたのはズワイガニ。お手頃価格でカニを楽しめます。これぞ日本の冬の味覚。
今年の忘年会シーズンを何とかしのいだ山田博義さん。
しかし今後、調達は更に厳しくなるといいます。
日本にカニが入りづらくなったり、値段も高騰しているが、何とか頑張っていきたい。
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