[WBS]【イノベンチャーズ列伝】医師1,200人を「チーム」に!

ワールドビジネスサテライト(WBS)

世の中をイノベーションで変えようとするベンチャー企業に焦点を当てるイノベンチャーズ列伝です。

医療の現場に横たわるある問題を解決しようと現役の医師が画期的なアプリを生み出しました。

夜、運ばれてきたのは自動車事故にあった子供。

対応するのは専門外の当直医。

周りの医師を頼りたい。

その時、手にしたのはスマホ。

一体、どうするのか?

医療法人財団順和会 山王病院

千葉県の総合病院「山王病院」。

夜7時過ぎ、救急外来に患者が運ばれてきました。

自転車に乗っていた小学生男児に自動車が突っ込んできたといいます。

男の子は倒れた拍子に腹部にすり傷を負ったほか頭部を地面に強く打っていました。

念の為、脳に影響がないかCTを撮ります。

ところが、この日の当直医、藤井達也さんは整形外科医。脳は専門外です。

ここで藤井さん、スマートフォンのあるアプリに文字を打ち込みCT画像を添付しました。

こんな質問を送ったのです。

僕がみる限り出血や骨折はなさそうにみえるのですが、どうでしょうか?

子供の頭部のCTは見慣れないし、脳外科医が常駐していないので他の医師に聞いてみようかと。

すると4分後、返信が・・・

神経内科の医師がコメントをくれた。

画像的には問題なさそうだと。

アプリを通じて神経内科の専門医から返事が。

藤井さんの診断が正しかったことを確認できました。

その藤井さんが逆にアドバイスを送った例もあります。

お茶の水循環器内科

受け取ったのは都内の開業医、お茶の水循環器内科の五十嵐健祐さん。

循環器内科が専門なのに骨折が疑われる子供が受診に来ました。

レントゲン写真と質問をアプリに投稿したところ、

藤井先生、整形外科医の先生から「骨折はなさそうです」と「痛みが続く場合は整形外科医に紹介してください」と。

自分の専門外のことをいろいろな医師に相談でき、ありがたい。

医師同士が自分の専門知識を持ち寄って助け合うアプリ。

これを開発したベンチャーとは?

アンター株式会社

都内にあるベンチャー企業「Antaa(アンター)」。

創業者は中山俊CEO(32歳)。

中山さんたちが開発したアプリ「Antaa QA」。

現在、およそ1,200人の医師がときに質問者、ときに回答者として利用しています。

自分の知識を患者や困っている医師のため提供してくれている。

治療法、診断をどうすればいいか相談する場として使ってもらっている。

中山俊さん

実は中山さん、現役の整形外科でもあります。

週に2日は病院で診察にあたっています。

そのな彼を起業に駆り立てた出来事がありました。

3年前、夜の当直をしていた中山さんのもとにある患者が・・・

肺が水で満たされている。すぐに抜かないと呼吸が止まってしまうかも・・・

でも本当に抜いていいのか!?

整形外科医の中山さんにとって肺はまったくの専門外。

知人の内科医に電話をかけたが・・・

なんで出てくれないんだ!

結局、専門書を頼りに肺から水を抜き、患者は一命をとりとめたが・・・

これでいいわけがないっ!!

専門医の知恵がいつでも借りられたら・・・

その後、医療の研究資料を共有できる仕組みを作ろうと全国の医師たちに資料の提供を頼んで回る。

しかし・・・断られること50件、中山は考えを変えた。

もらおうとするだけだからダメなんだ・・・

自分からも与えないと!

それから中山は内科医のための整形外科の勉強会を何度も開き・・・

困ったことがあったらいつでも聞いてください。

そして100人の内科医たちにLINEのアカウントを配り、こう約束した。

5分以内に必ず答えます!

車の運転中にスマホがなると路肩に止めて返信した。

夜中2時、3時に何日も連続して鳴ることもあった。

「鳴った」と思って目がボンって覚める。それを半年間ずっとやっていた。

その後、中山さんの活動に共感した医師たちが30人集まり2016年にAntaaを創業。

2017年、「Antaa QA」運用を始めました。

やまと在宅診療所 登米

そして今、力を入れるのは地方でのユーザー獲得です。

地域医療の現場の医師に会いにきた。

向かった先は在宅診療の拠点。

こうした地方の医療現場ではいま大きな課題を抱えています。

田上佑輔理事長、

一部は登米市から出て岩手県にも移動、16kmの範囲を診察しなければいけない。

明らかに医者が足りない。

彼女たちが診療する範囲は東京の3倍。

当然、専門外の患者を見る機会も増えます。

中山さんは医師不足の地方にこそAntaa QAのニーズがあると考えたのです。

今までにない医師不足の問題解決策になりうる。

さらにこんな未来を描きます。

医者と医者がネットでつながるだけでも日本を超えた様々な地域で医療を底上げできる。

海外、東南アジア諸国などの医師と連携していきたい。