アベノミクスの第3の矢として始まった国家戦略特区。加計学園問題で耳にする機会も多くなっていますが、その狙いは地域を限定して規制緩和などを行い民間の投資を集めてビジネスをしやすい環境をつくろうというものです。
始まって3年が経過しました。今、ある国家戦略特区では新たな二刀流ビジネスが広がりつつあります。
株式会社Amnak
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兵庫県にある養父市。今、ある取り組みで全国から注目を集めています。
5月15日、田植え機を積んだトラックが集まってきました。
この日は田植えの日、農業法人のアルナックは2年前から養父市で主に酒米を育てています。
それぞれ作業にかかってください。
今年の作付面積は東京ドーム約1.7個分の8.3ヘクタール。
実はアルナックはリフォーム事業などを行う山陽アムナックの小会社。リフォーム業界は景気に左右されやすいため、安定した収入を見込んで農業を始めたといいます。
グループ内で農業とリフォームの二刀流というワケです。
きっかけは3年前、養父市が国から「農業特区」に指定されたこと。その後、農業参画や農地取得などで多くの特例が認められるようになりました。
その中のひとつが50%未満だった企業の農業法人への出資制限をなくす特例です。アムナックも特例で小会社になったことで山陽アムナックの資金が使えるようになり、約3,000万円で精米施設を建設しました。
アムナックの藤田彰社長は、
現在赤字。来年の3月は黒字化できると思う。次の年度も作付面積を増やして黒字が大きくなる。
兵庫ナカバヤシ株式会社
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兵庫ナカバヤシもこうした特例を活用し2年前、農業に参入しました。
雑誌や論文を1冊にまとめる合冊製本が主力。全国の大学の約8割や国立国会図書館にも納めている老舗です。
その工程を見せてもらいました。
まず広告などの不要なページを外してバラバラにします。それを小分けにしてミシンで縫い合わせていきます。こうすることで完成したときに開きやすくなるといいます。端を切り揃えて整えてからヘラを使って糊を塗り、表紙を接着したら完成です。
社員の田村正幸さんはこの道33年のベテラン。主に裁断を担当しています。
いい本を仕上げたといわれるのが満足。やったと思う。
翌朝、軽トラックで出社してきた田村さん。工場とは違う部屋に入っていきました。工場のスタッフが農業を行う社員の二刀流です。
部屋には目標売上1億円の張り紙が飾っています。1億円売り上げれば農業部門の黒字化ができるのだといいます。
畑は市内に点在していて合計7ヘクタール。栽培しているのはニンニクです。
全体的に緑ならいいが、畑がすぐ黄色になると枯れているということ。日々観察。
すっかり農家の風格が漂う田村さん。
畑には小谷英輔工場長も現れ作業に参加します。
なぜニンニク栽培を始めたのか聞いてみると、
祖業である製本事業が1年に2回ほど山谷がある。ニンニクが最盛期と閑散期の谷を埋める周期に当てはまる。仕事の二毛作をやっている。
製本の繁忙期が1月から3月と7月から9月、主に論文の製本が集中する時期です。
一方、ニンニクは3月から7月と9月から12月が忙しい。繁忙期がうまい具合にずれているのです。
特例を活用して二刀流を推し進める兵庫ナカバヤシ。この土地もその成果だといいます。
こっちが去年11月に買った自前の土地。
農家の集まりである農事組合法人などでなければ購入できなかった農地を2016年9月の特例で一般の企業も買えるようになりました。
それを受けて兵庫ナカバヤシも土地の一部を買い上げました。買った土地では自由に土壌改良ができるため、より高品質のニンニクの生産が見込めるといいます。
地域の中から耕作放棄地を無くして、農業が携わることで儲かる仕組みを作る。耕作放棄地をどう利用するか、企業が農業をやる意味はそこにある。
特区の特例を利用して養父市で農業を始めた企業は13社。この2年間で耕作放棄地を含む、使われていなかった農地が東京ドーム3.4個分が農地として活用されるようになりました。
養父市の国家戦略特区担当の余根田一明さんは10年後にはこの3倍を農地として蘇らせたいといいます。
企業のノウハウだとか人材、資金力が必要さと思う。行政としてもできる支援は考えていきたい。
進む企業の二刀流、兵庫ナカバヤシではこんなことにも効果がありました。
今年の新入社員の足立です。
足立渚沙さんは地元の農業高校を卒業後、農業がしたくて兵庫ナカバヤシに就職しました。農業で生まれた雇用です。
やっていたら病気を見つけたりなど、たまにあるので楽しい。
病気の種類や作物の育て方を学んできているので頼りになる。頼りにしますよ、これからの農業。