株式会社悪の秘密結社
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10月28日、和歌山のとある商店街。
そこに人だかりができていました。
見つめているのはヒーローショーです。
子供たちのお目当ては正義の味方ではありません。
株式会社悪の秘密結社、代表取締役社長、ヤバイ仮面。
表情がクルクル変わる悪役、ヤバイ仮面です。
ヤバイ仮面は福岡発のローカル悪役ヒーロー。
キレのある動きに悪役らしくないカッコよさで大人気です。
フォルムがかっこよくて好き。
活動は西日本が中心。
最近ではネットを通じて人気が広がり全国からファンがやって来るほどに。
ショーを終えたヤバイ仮面、控室へ。
その気になる正体は笹井浩生さん(28歳)。2016年にヒーローショーの運営会社を立ち上げた若き社長です。
「株式会社悪の秘密結社」という会社で、ヒーローショーに特化した悪役専門
悪の秘密結社の出演料はイベントの規模に応じて約10万円から。
ご当地キャラなどと戦い最後はキレイに負けるのがお約束。
主役の引き立て役として売り込んでいます。
オリジナルグッズもあります。ヤバイ仮面のキャラクターバッジは800円、多い時は1回のイベントで10万円ほど売り上げるといいます。
これからもっと活躍したいヤバイ仮面、ところが大きな壁が…
銀行に追加融資をお願いしたら「厳しい」と。
悩み
福岡市中央区、雑居ビルにオフィスを構えるのが株式会社悪の秘密結社。
福岡で生まれたローカル悪役ヒーロー、ヤバイ仮面を中心に悪役専門のヒーローショーを手掛けるベンチャー企業です。
オフィスはちょっと手狭の6畳一間。
15人のスタッフを束ねる社長の笹井さん、ショーの企画から実演まで一人で何役もこなしキャラクターのデザインも手がけています。
一番苦労したのは目が変光できるギミック(仕掛け)。LEDの電飾を何マス分使うかなどを試行錯誤した。
こだわり抜いてこれまでにない悪役ヒーローを作った笹井さん。
悩みのタネはお金でした。
「スーツってお金がかかる?」
かかっています。FRP(繊維強化プラスチック)という船に使われる素材。最新の造形技術を投入して作っている。「ヤバイ仮面」にも数百万円かかっている。
笹井浩生さん
ショーの台本は全て笹井さんのオリジナル。
アクションの指導から照明や音響の演出も一人で担い、がむしゃらに突っ走ってきました。
10月は1日2班体制が複数ある。
週末は1日に複数のイベントを同時にこなしています。
創業1年目は仕事が入らず赤字。
2年目には笹井さんの営業努力で大きなイベントから声がかかるようになり、ようやく黒字になりました。
笹井さんは高校卒業後、福岡の時計の販売店などに勤務。そこで時計のヒーローを自作自演し宴会で同僚たちを楽しませていました。
高校時代のアルバイト募集の切り抜き。初めてヒーローショーに出演した時のものです。
このショーで笹井さんには忘れられない経験が…
2,000人の子供が入る劇場でヒーローショーをした時に子供たちから「がんばれ」と、こんなこと言われたことないな。泣いてしまって、そこから完全にとりこになった。
全国で活躍しているヒーローを作り、たくさんの子供たちを喜ばせたい。そんな夢を描き会社を立ち上げた笹井さんですが、お金のことでいつも悩んできました。
ベンチャー企業を急に始めて生命保険を解約した。資金問題で毎回二の足を踏む。
去年3月に銀行に追加融資をお願いした。「厳しい」と1期目の売上が悪かったので…悔しい。
それでも自分の夢は諦めていません。
新たな悪役。
新しい悪役のデザイン画、このキャラクターを目玉に東京進出を考えていたのです。
まだ資金を調達できず、実現のメドが付けられずにいました。
「いくらかかる?」
間違いなく100万円前後になる。
「ポンと出せるのか?」
無理。厳しい。
新しいキャラクターも引っさげ、ヤバイ仮面を東京で大暴れさせたい。
翌日、笹井さんが動き出しました。
融資
乗り込んだのは笹井さんの会社とも付き合いがある会計事務所。
新しい資金調達の方法があると聞いてやって来ました。
会計事務所の担当者は、
新しいサービスがあって、資料作成や資金調達までの時間をテクノロジーの力で短くする。
教えられたのはネットで申請する銀行融資。金利は5%からと通常の約2倍ですが、
やります。
笹井さん、即決です。
通常の銀行融資で重視されるのは決算書、創業時は事業計画書などをベースに審査されますが2年目以降は前年度の決算が主な判断材料になります。
しかしこの融資は決算書が必要ないといいます。
創業1年目は赤字で融資を断られた笹井さん。
藁をもつかむ思いで申請をします。
希望額は新キャラクターの制作費100万円。
これまで書類を整えるのに数週間かかっていた申請が約10分で完了。
首を長くして待っていて。
今日もショーなので戦いながら待ちます。
夜11時過ぎ、事務所に公演から戻った笹井さんの姿がありました。
メールを開くと、
来ています。
融資の審査結果が届いていました。
「もし融資が下りていなかったら?」
つらい…。
融資は決まったのか?
審査結果
悪役専門のヒーローショーを手掛ける笹井浩生さん。
会社の将来をかけて新たな銀行融資を申請しました。
その日の夜、審査結果のメールが…。
果たして銀行の結論は?
開けます。
通りました!ありがとうございます!
笹井さんへの融資が決まりました。
通常の融資では審査に1ヶ月ほどかかるところを、なんと即日決定です。
よかった。
融資が下りた。
頑張りましょう!
夢の東京進出に大きく前進しました。
株式会社福岡銀行
[blogcard url="https://www.fukuokabank.co.jp/"]
融資を決めたのは福岡県の大手地銀、福岡銀行。
実は笹井さんの追加融資を断った銀行です。
なぜ今回は融資を決めたのか、担当者のデジタル戦略部の土田修平さんがあるものを見せてくれました。
こちらが入出金の明細。何にいくら使ったかが出る。金額はこちらが入金。
銀行が融資の判断に使ったのは笹井さんの会社の口座情報でした。
ただの情報ではありません。
他行も含め全てのお金の出入りを確認していたのです。
今回の審査は今までの財務情報中心から口座情報も加えて見るようにしている。足元の実態を評価して審査結果に結び付けられた。
決算書では分からない収益の伸び。それを確認できたことが融資の決め手となりました。
株式会社マネーフォワード
[blogcard url="https://moneyforward.com/"]
小さな企業を救うネットを使った融資革命。
その技術を開発したのがマネーフォワード。創業6年目のベンチャー企業です。
この会社のヒット作が家計簿アプリ。銀行やクレジットカードなどお金の出入りがスマホで一覧できる優れもの。
550万人以上が利用しています。
笹井さんへの融資を実現させたのが家計簿アプリの技術を応用した企業向けの融資のシステム「MGクラウドファイナンス」でした。
マネーフォワードは企業のリアルタイムの口座情報をネット上で管理。
銀行はそこにアクセスすれば融資の判断を素早くできるのです。
開発したのは社長の辻庸介さん(41歳)。
今まで恩恵を受けられなかった個人・中小企業が恩恵を受けられる。テクノロジーは今まで弱者だった人を救う。
銀行から借りられなかった人・会社が借りて事業を伸ばすことはすごくうれしい。やりがいがある。
東京公演
12月9日、東京・豊島区。
そこに笹井さんの姿がありました。
この日は「悪の秘密結社」初の東京公演。
会場にはネットで知ったお客様、約100人が詰めかけました。
そして、
エボシ武者見参!今宵の風向きは悪くない。
100万円の融資で作った新キャラクターが登場。
念願の東京進出で思う存分大暴れ。
がんばれ!
最後はキレイに負けてエンデイング。
かっこよかた。
「ヤバイ仮面」
を見たことなかった、面白かった。
悪の秘密結社初の東京公演は大成功。
笹井さん、大きな一歩です。
手応えはつかめた。有志で作った怪人に頑張ってもらって東京進出をもっと広げていきたい。