[ガイアの夜明け] 「常識破り」で市場を拓く!(3)

「常識破り」で市場を拓く!

有限会社大西陶芸

愛媛県砥部町。町を貫く道の別名は陶街道。ここは砥部焼という焼き物の産地です。

もともと砥石の産地として有名な場所。江戸時代、その砥石のくず石を細かく砕き、粘土状にしたものを原料として焼き物が生まれました。

砥部焼の窯元のひとつ、大西陶芸。

2代目社長であり、職人でもある大西先さん(41歳)。

作るだけではビジネスとして成り立たない。このご時世、物が高いと売れないので本当に難しくなっている。

砥部焼の売上が落ち込む中、ある器の製作を始めました。

見せてくれたのは真ん中の部分に少しくぼみがある特殊な木べら。その木べらで形を作ると内側は少し返しがついた状態になります。

いまではこれが大西陶芸一の売上を誇る商品です。

360度グルっと返しがついた変わったカタチの器です。

僕らも初めての経験だったので、内側に「そり」がある器は。どういう風な目で見られるのか正直分からなかった。予想をはるかに上回る注文をいただくようになった。

しいのみこども園

大分県にあるこども園。2歳時のクラスではお昼ごはんの時間になりました。

使われていたのが大西陶芸のあの器です。

子供たちは上手に食べています。しかもみんな、ほぼこぼさず食べていました。

実はあの返しがポイント。食材を引っ掛けることで2歳時でも簡単にすくえるというもの。

子供向け商品で「こぼしにくい器」といいます。

内野眞奈未園長は、

食育のために子供たちが自分たちで食べられるような子供用の器がないかと給食用の食器を探していた。

子供と伝統工芸という意外な組み合わせ。

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株式会社和える

日本屈指の焼き物の里、栃木県益子町。

子供用の伝統工芸品ブランド「和える」の矢島里佳さん(29歳)がやってきました。

訪ねたのは益子最大の窯元「つかもと」。

株式会社つかもと

これはもしかして?

テストで作ったやつです。

そこにあったのは「こぼしにくい器」。和えるでは砥部焼以外でも山中漆器、津軽焼、大谷焼と4つの産地でこぼしにくい器を作っています。

さらなる全国展開のため5番目の産地として目を付けたのが益子焼でした。

しかし、製造部長の米川敦さんは、

だいぶ苦戦をして、職人が嫌がって。

益子の土の質はゴツゴツしています。そのためこぼしにくい器の特徴である返しの部分の仕上がりにバラつきが出ていたのです。

その原因のひとつが益子で使っている木べらにあるのではというのです。

すると、

他の産地の職人の木べらがあったら役に立ちます?

それはもう役に立ちます。

ちょっと貸してもらう?

写真だけでも。

1週間後、つかもとの製造担当の加藤充俊さんがパソコンで見ていたのは木べらの写真。

これは砥部焼のこて(木べら)。

矢島さんが砥部焼の職人から木べらの写真を送ってもらえるように手配したのです。

さっそく、砥部焼の木べらの写真を元にこれまでのものに改良を加えていきます。

新しいこて、こちらを使ってください。

ろくろ職人に使い勝手を試してもらうと、

前回のやつよりは作りやすい?

一発で決まる。

木べらを改良したことで返しの部分が均一に作れるようになりました。

2週間後、新しい木べらで作った器が焼きあがっていました。どうでしょう?

おおむね良くはできている。

別の焼き物産地の職人同士が助け合う。これまでにはなかったことです。

新商品

2月、東京・目黒。子供向け伝統工芸品ブランド「和える」の店舗では矢島さんがデザイナーの太刀川瑛弼さんと新商品の開発を進めていました。

今度の商品は箸置き。

日本人の和食のいただき方が崩れているのを何とかしたいという思いがあって、日本の食卓に必要で今一番忘れかけられている箸置きを子供たちに届けていくってことは、すごく意味があるんじゃないか。

和えるでは使うと自然に食事の所作が身に付くという食器を作っています。例えば茶碗は底の部分の凸凹が指に引っ掛かり子供でも自然と正しい持ち方ができるといいます。

このシリーズの仕上げとして矢島さんはどうしても箸置きを加えたいと考えていたのです。

大丁場 石の会

2ヶ月後、香川県高松市。ヘルメット姿の矢島さんがいました。

やってきたのは巨大な採石場。

ここは平安時代から知られる由緒ある石の産地です。

ここで採れるのは庵治石。日本三大花崗岩のひとつ。

大丁場 石の会の大久保一彦代表は、

庵治石は硬さとネバさがある。特殊な建築材を除いては世界で一番高い石。

硬く風化しにくいことから主に墓石として使われてきました。

磨けば磨くほど光り、斑と呼ばれる模様が浮かび上がるのも特徴です。

しかし歴史ある石の産地も海外からの安い石に押され厳しい状況です。

1982年に175あった事業所も20177年には86と半減。

伏石石材

採石場近くに工場を構える伏石石材。

12年前に父の跡を継いだ伏石康宏さん(40歳)。危機感を募らせていました。

作る数自体がすごく減っている。8割くらい仕事がなくなっている。

4月上旬、伏石石材に和えるの矢島さんがやってきました。

さっそく目を止めたのが、

このサイズでブリリアントカットするんですか?すごい!

実は伏石さん、庵治石を使ったアクセサリーや花瓶など小物作りに積極的に取り組んでいました。

矢島さん、この技術に目を付けていたのです。石で箸置きを作りたい理由を伝えます。

赤ちゃん、子供たちの日用品の中で石を使う機会がすごく少ない。大人でも家の中に使うという用途で石のある家ってあまりないと思う。

デザインは少し大きめの丸型。子供が飲み込めない大きさで、しかも衛生面を考え置くと自然に箸先が出るようにしたいというのです。

ちょっとやってみます。いろいろ。

お願いします。ギリギリのラインを。

要望に応えられるのか?

試作品づくり

翌日、伏石さんはさっそく試作品づくりに乗り出しました。

手にしていたのは筒状に加工された庵治石。それを大型の機械を使って切っていきます。するとデザインの元となる丸型の石ができました。

そして電動ヤスリを使い箸を置くための溝を作ります。

こだわって作ってほしいというのはすごくうれしい。

すると伏石さん、箸置きをどこかに持っていくようです。

試作途中の品をどうしても試して欲しい人がいました。

着いたのは自宅。伏石さんには7歳と1歳、2人の娘がいます。

夕食が始まると取り出したのは、

今こういうのを作っているので、みんなに使ってもらおうかと思って。

長女に使いやすさを確認してもらいます。

手で取る時に、そこにお箸を置いて。

箸は置くものの、なかなか安定しません。むしろ使いにくそうです。

どうやったらいいんだろう、こういうのって。

知らん!

自分で考えるしか手はないようです。

はじめてシリーズ

香川県高松市にある伏石石材。庵治石の箸置き作りに取り組む伏石さん。

機械では出せないので手で出してみようかな。

箸が安定しない問題を手作業で解決しようと決めました。チェックしては削っての繰り返し。

3週間ぶりに和えるの矢島さんがやって来ました。

箸置きの仕上がり具合を見に来たのです。

素晴らしい。すごくいいですね。

手作業で徹底して仕上げた溝の部分。溝に沿うように置くと箸も固定され自然と箸先が出るように仕上がっていました。

いい仕事ができたと思います。

すると矢島さん、なにやら持ってきたのものを並べ始めました。箸置きができたことで食事の所作が身に付くという「はじめてシリーズ」が完成したのです。

私の夢が今ここに実現しました。

発想を変えることで衰退する伝統産業に新たな可能性を広げていきます。

ここからが本当のスタート。どこまで赤ちゃんや子供たちに伝えていけるのか。最終的に大人になった時に使い続けていく愛着が育まれていったらうれしい。

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